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【GWN】ネグザ小説「ランディング」PART2

東京に行く準備がさっぱりできていない中、「ランディング」弥穂世代・後編です。(前編はこちら)

紫単vs緑黒赤、赤単vs緑黒、茶単vs青単という対戦組み合わせでしたが、考えるとどちらの対戦も片方が早めに展開するデッキになりもう片方が耐えながら……という戦況に。
展開重視で本国枚数を気にしなかった昔よりあっさり風味です(プレイしてるカードやプレイングなんかは現実離れしてる部分が多々ありますが)。

そんなこんな弥穂たちの話はこれにて着地。
話や対戦の内容について若干あとがきも付けました。

MIHOAGE

今までのシリーズを読んでくれていた方には同窓会的な、また初見でもグランプリまでの暇つぶしになればいいなと思っています(決まり文句。
よろしかったら「続きを読む」からどうぞ。
【 MIHO AGE (後編) 】


◇第4章 -雅人-



「僕のターン……ドロー」

 雅人は残り18枚の本国からカードを1枚引きながら相手の配備エリアを見る。
 グフ(ランバ・ラル機)とガンダム[グリンブルスティ]+ランバ・ラル。共に強襲をもったユニット。
 それを相手に本国差10枚を逆転するには、自分もかなりハイスペックなユニットを用意しなければいけない。

「配備フェイズ、フル・フロンタル《S1》を赤Gにして、ローゼン・ズールをプレイ!」
「はい」

 版十はコストを残していないため黙ってそれを見ている。
 17枚の本国、シナンジュ系……いやシナンジュ(バズーカ)が欲しい!と本国のカードを一気に覗く雅人。

「…」

 なんとか、あった。
 彼はそのユニットを抜き出し、戦闘フェイズを告げた。

「宇宙にローゼン・ズール、地球にシャンブロを出撃させます」
「9ダメージ受けます」

 版十は特に思うこともなく本国のカードを捨て山に移す。
 ターン終了時に雅人は抜き出しておいたシナンジュ(バズーカ)を配備エリアにリロール状態で出した。
 このユニット以外防衛要員を残さなかったのは、本国差をひっくり返したいのもあったが、シナンジュ(バズーカ)がそれだけ強力なユニットだからだ。
 1コストで対象を-X/-X/-Xするそのテキストは、コストにしたカードのロールコストの値をXとするため、シャンブロをGとしている現状の雅人は交戦せずにグフ(ランバ・ラル機)を落とす事ができる性能であった。

「配備フェイズ、ローズマリーを黒Gに」

 戦闘フェイズを告げる版十に雅人は身構えた。
 普通、ガンダム[グリンブルスティ]+ランバ・ラルのセットグループではシナンジュ(バズーカ)に勝てないため、出撃できない。
 しかし、彼女が取った行動は、その出撃だった。

「地球エリアにグフ、宇宙エリアにグリンブルスティを出撃」

 版十の手札は2枚。ここで出撃してくるということは、破壊カードの可能性を考えなくてはいけない。
 GNバズーカ、超高空攻撃の下で、対の猛撃、歴史の立会人……いや歴史の立会人なら様子を伺うような真似はしないか、と雅人は思う。
 なんにせよ、どちらも強襲部隊であるため破壊されてしまえば12ダメージが通る。

「考えさせてください」

 雅人は眼鏡のブリッジをくいと上げ、そう告げた。
 彼の場には赤G2枚。リフレクタービットはなく、本国は16枚。手札に握ったカードはシナンジュ(バズーカ)と相性が良い。
 視線をあげると版十と目が合った。ふっくらした唇が、今にも「GNバズーカ」と言い出しそうで思わず目をそらす。

「防御規定はありません」
「そうか。12ダメージだ」

 版十はターンを終え、雅人の本国は4枚となる。
 グフと相打ち状態でも本国は守るべきだっただろうか、そもそもこのターンは考えている通りになるだろうか……。
 雅人の頭の中はそんなことばかりがぐるぐると巡っていた。こういう詰めの状況は得意だと思っていた自分はどこにいったのだろうと自問する。

「ドロー」

 引いたカードを見て雅人は決める。できることをするだけだ、と。

「配備フェイズ、介入行動を赤Gとしてプレイ、コストを払いグリンブルスティに3ダメージ」
「ん」

 防御力7なのだから、この3ダメージとシナンジュ(バズーカ)のテキストで撃破できる。
 それさえかなえば、後はシナンジュ(バズーカ)が破壊されても戦線は維持できる、と雅人は戦闘フェイズを告げる。

「宇宙にシナンジュ、地球にシャンブロを出撃させ、攻撃ステップ中にグリンブルスティにバズーカの効果を」
「わかった、破壊されよう」
「ダメージ判定ステップ」

 版十は静かに口を開いた。ゲーム終盤、力の入ってもおかしくない破壊カードの宣言であるにも関わらず、滑らかなだ。
 まるでドローカードをプレイするかのように、対の猛撃がコールされる。Gエリアの巡る因縁とリンクしたその能力は格闘10以下を対象とした直接破壊。条件付き破壊もここまでくるとGNバズーカとの差など誤差でしかない。

「4ダメージ受ける」

 版十の第6ターンとなる。
 グフ1枚ではローゼン・ズールと相打ちがいいところだ、と唯一の手札――シャンブロ(水中巡航形態)を握りしめる雅人。

「配備フェイズ、グフ(ランバ・ラル機)にロスヴァイセをセット」
「こ……これはっ」

 速攻・強襲を持った7/2/4。
 本国3枚の雅人にはローゼン・ズールで防御する選択肢は無くなった。

「戦闘フェイズ」
「攻撃規定前にシャンブロを同じシャンブロに改装。テキストでグフをゲームから抜き出します」
「了解」

 版十はそのユニットを脇にどけるが、カードから手は離さず、そのままターンを終了した。
 ロール状態でグフ(ランバ・ラル機)が戻った配備エリア、その中央に鎮座する彼女の本国。
 聞けば枚数は15枚。序盤のグフによる除外も響いたのだろう、狙えない数字ではなくなっていた。

「僕のターン、ドロー!」

 残り2枚の本国、止まることは許されなかった。そしてカードの引きも止まらずに応えた。
 雅人は相手の本国を見据えた。

「戦闘フェイズ、地球にシャンブロ、宇宙にローゼン・ズールを出撃させます」
「9ダメージ受ける」

 雅人は引いたばかりのカードを手にターンを終了する。
 この時点で負けを宣言しないのはもちろん最後の1枚が有効な防御手段となるカードだからであり、版十もそれは知っていた。
 
「ドロー。配備フェイズ、ギリ・ガデューカ・アスピスを黒Gをして配備」

 引いたカードの表を見たか見ないかのうちに6枚目のGとした版十。握ったきりの手札1枚、戦闘フェイズを告げた。
 雅人は相手にユニットが無かったのを見てまずは安心する。手札は1枚で両エリアを封鎖できるようなコマンドではない。

「攻撃ステップ規定の効果に入りたいが」

 相手も既に察しているのか、ここにきて許可を求めてくる。

「ゼー・ズール(ビーム・マシンガン)をプレイ!グフをゲームから抜き出します!」

 版十の本国に2ダメージが加わり、残りは3枚。そして、このターン相手は攻撃不可能。
 シャンブロ(水中巡航形態)も、ゼー・ズール(ビーム・マシンガン)も、ローゼン・ズールもあるのだから、手札1枚の相手にはどうしようもできないはず。
 瞬時にそこまで考えた雅人の目には、脇にどけたグフ(ランバ・ラル機)が映った。彼女はカードから手を離している……?と思った矢先、版十が「いいか?」と口を開いた。

「ウーイッグ爆撃をプレイする」

 ユニット全破壊コマンドであった。
 手札のない雅人許可を取るまでもなく解決されたその効果によってシャンブロ(水中巡航形態)も、ゼー・ズール(ビーム・マシンガン)も、ローゼン・ズールも残らずジャンクヤードに移動する。
 それを確認してから、ようやく版十はグフ(ランバ・ラル機)を手にする。ターン終了を口にして。

「ドロー」

 雅人は何の希望もなく最後のターンのドローフェイズを終える。
 残り本国2枚の彼にとっては、友情コンボのような事態でグフ(ランバ・ラル機)が残ったことはどうでもよかった。ユニットが無くなってしまったことが致命的だった。

「負けました」

 雅人は引いたカードの種類がコマンドと見えた時点でそう告げた。
 惜しかった、と言えばそうかもしれないが、もうすこしどうにかできなかったのだろうかという思いだけが残っていた。

「ありがとうございました」

 互いに頭を下げて立ち上がる雅人と版十。
 結果報告は対戦した2人のプレイヤーで行かなければいけない決まりだ。

「強かったです」
「いや、最後に戦闘配備ユニットを引かれてたらこちらが負けていた」

 版十は表情を和らげる。
 座っているときはわからなかったが、彼女はマキシ丈のパッチワーク柄のロングスカートを履いていた。

「じゃあ行……」

 雅人がそう言って歩き出した時、唐突に版十が転んだ。
 ロングスカートの裾を踏んで転んだらしく、びたんとかばたんとか、痛そうな音を立てた。

「だ、大丈夫ですか」

 雅人が声をかけると、大丈夫、と顔を上げた。
 額をこすって、しかめっ面で鼻をすすった版十の姿を見て、雅人は急におかしくなって思わず噴き出し、慌てて「すみません」と口元に手を当てた。

 カードを手にしているときは冷静沈着に見えたが、意外と抜けてるところがあるのかもしれないな、と雅人。
 会って30分やそこら、カードやプレイだけでは相手がどういう人間なのかまではわかるはずもない。
 彼が今更そんなことを考えたのは、負けて感傷的になっていたというのも大きかった。


◇第5章 -健太-


 関ヶ原健太に幸いなことはいくつかあった。
 まず、ユニットを2枚配備できたこと。これによって相手――東がエレドア・マシスのテキストで1コストを使わなければならず、ゲインを使えなかった。
 そして、そのユニットの1枚がフリーデンだったこと。規定ドローを捨て山に切り替えていたことで本国の消耗が僅かだが軽減された。これが無ければ既にこのゲームは終わっていた。

「なんとか残った……か」

 健太は配備エリアに帰還する東のユニット――陸戦型ガンダムの群れを見ながらそう呟く。
 だが、残り本国はたったの2枚。攻撃がかすっただけで負けとなる。

「帰還ステップにディアナ降臨をプレイします」

 そう言って手札のカードを見せ、配備エリアに残っていた2枚の茶Gをロールさせる。
 捨て山を対象にするカードが多いデッキでよかったと痛感しながら、ハンガーに移ったのはガンダムXディバイダーと共に戦う仲間《茶》。

「俺のターン、ドロー」

 フリーデンで切り替えた規定ドローでカードが手札に舞い込む。6国力のカードだ。
 「待ってたぜ」と健太は心の中で呟いた。この絶対的不利の場を変えるのに必要なカード。

「その顔は……何か引いたな」
「えぇ」

 東の素直な質問に健太も隠さずに答える。
 「ある」「ない」という問答で駆け引きをする気はないし、健太はそういう性格だった。

「共に戦う仲間を茶Gにして、ガンダムXディバイダーをプレイします」
「おっけー」

 健太はハンガーのカード2枚を場に出し、4枚ある手札はそのままでターンを終了した。
 リロール状態のユニット3枚。エレドア・マシスと陸戦型ガンダム(ミサイルランチャー)のテキストを使われても防衛部隊を形成できる枚数だ。

「俺のターンだ。君がどんな札を用意しようが、突破してみせる!」

 東は力強くそう言うと、配備フェイズを告げた。
 狙うのは一貫して奇襲。速度で本国を稼いだ後は、相手が用意する防御プランを崩しながら攻撃する。初手からあったエレドア・マシスを、相手がユニットを2枚出すまで見せないように手札に持っておいたのもその為。
 次の一手は……。

「カツ・コバヤシのカードを陸ガン(ミサイル)にセット」
「どんなコバヤシでしたっけ?」
「場に出た場合、自軍カード1枚と敵軍カード1枚をロールするコバヤシだぜっ!」

 健太の素っ頓狂な聞き方に、東はノリ良く返す。
 対象に選んだカードは、エレドア・マシスとガンダムアシュタロンだ。これで健太のリロール状態のユニットは2枚。

「いくぞ、戦闘フェイズ!エレドアの効果を宣言!」
「っ……」
「攻撃ステップ規定で、Ez8、陸ガン、陸ガン(シロー機)、陸ガン(ミサイル)、陸ジム、ホバートラックで出撃!」

 防御ステップ規定前に陸戦型ガンダム(ミサイルランチャー)のテキストでガンダムXディバイダーがロールされる。
 油断はできない、と東は健太の4枚の手札を見る。ロール状態とはいえ、ガンダムXディバイダーもアシュタロンも改装を持っているのだ。
 もっとも、改装によって防御できたとしてもフリーデンも出撃しなければならず、それを撃破してやれば残り本国2枚の相手はドローにより敗北するのだから、改装は逆転手段にはならない。

「防御ステップ」

 健太の言葉に東は「おう!」と力強く返す。

「生きている遺跡をプレイ!」
「っ!?」

 捨て山1つの上4枚からユニットを場に出す奇襲コマンドカード。その手があったか、と東は青ざめる。
 対する健太もまだ安心せずに「頼む」と自分の捨て山の上のカードをめくった。ユニットが2枚以上いなければ、負け確定となる。

「よっし!ガンダムヴァサーゴとデスバーディ!」

 部隊戦闘力7の防御部隊を形成し、地球エリア――このゲームで初めて戦闘エリアにユニットを移動させる。

「Ez8はテキストを使っても撃破されるか……なら、陸ジムのテキストを使用!この部隊の戦闘ダメージは全てジムで受ける」
「了解しました」

 それで東のターンは終わり、健太の第6ターンが来る。
 「もったぞ……」と、手札のカードに目を落としながら健太はフリーデンのテキストを宣言した。

「配備フェイズ、カテゴリーFを茶GにしてガンダムDXをプレイします!」
「やはりかっ、だが……まだ負けじゃないっ」

 健太の場に戦闘配備する6国力のユニット。
 戦闘力的には物足りない感はあるが、その最大の魅力は全ての敵軍ユニットに-1/-1/-1コインを2個乗せるテキスト。
 これで東のユニットは一気に戦力ダウンし、防御1のブラッドハウンドにいたっては破壊である。防御力2の陸戦型ガンダムはハヤト・コバヤシがセットされているため助かった。

「攻撃ステップ、宇宙にDX、地球にアシュタロンとフリーデンを出撃させます」
「何もできない、11ダメージ受ける」

 東の本国はテキストで6枚除外したとはいえダメージを受けていない状態。
 健太の総攻撃をあと1回受け流すほどの余裕はあった。

「まだだっ、マイナス修正くらいで諦めるわけにはいかない……ユニットが無くなるまで攻め続けるんだっ!」

 また闘志を燃やす東に、帰還ステップの効果を解決した健太はまだターンを譲らない。
 ガンダムXディバイダーが1枚だけリロール状態で残る配備エリアを指差して口を開いだ。

「2枚あったんです」
「ん……?」
「DXは2枚あったんです」

 それは改装の宣言だった。
 ガンダムDXをガンダムDXに置き換え、ふたたび東の全てのユニットに-1/-1/-1コインを2個乗せる。

「逆転満塁ホームランっ!」
「ううぉおおっ!」

MIHOAGE3

 東のユニットで防御力が5以上あったのは、ガンダムEz8と陸戦型ガンダム(ミサイルランチャー)のみ。
 そしてその2枚も陸戦型ガンダム(シロー機)の恒常型テキストで戦闘修正を受けての事。陸戦型ガンダム(シロー機)の廃棄と共に順次破壊状態となった。
 ハヤト・コバヤシをセットした場所が仇となった。一番防御力の薄いユニットを補填したつもりが、全滅を招いたのだ。

「お、俺のターンだっ!」

 東はカードを引く。彼の場には青G4枚とエレドア・マシス、人海戦術。
 この戦力ではガンダムXディバイダー1枚を突破するのにどれだけのターンがかかるだろう。それでも東は諦めなかった。

「陸戦型ガンダムをプレイして、ターン終了」

 ガンダムEz8ハイモビリティカスタムを引けば、敵軍帰還ステップにクイックプレイして、返しでクロスウェポンによる両エリア高機動攻撃で本国に致命傷を与えることができるかもしれない。
 しかし、彼がその奇襲を実行するのには、17枚という残り本国は足りな過ぎた。


「ありがとうございましたっ」

 関ヶ原健太と東次郎。戦いを終えたふたりはに固い握手をした。
 互いの健闘を称え、次の戦いに向けてエールを送って別れる。

「どっちが勝ったわけ?」

 スコアシートを提出して帰ってきた健太に、明香が難しい顔をしてそう聞いた。
 健太は、どこ見てたんだと心外な顔をしつつも「俺だよ」と返す。

「ふーん、どっちも満足そうに笑ってたからわかんなかった。それにあんたの本国……だっけ?かなり最初の方からピンチだったじゃない」
「本国2枚からの大逆転勝利ってやつさ、滅多にないけど」

 「あんたはやめろよ」と軽く突っかかった後、ニッと笑って見せる健太。
 皆を言わない彼の言い方に明香は少しだけ気になったらしく「なにそれ、どうやったの?」と聞き返す。

「教えてあげたいけど、もうちょっとルールに詳しくならないとなぁ」
「なんで偉そうなのよ、私だってルールくらい……って、ちょっと!」

 健太はもったいぶった言いまわしで歩き出し、「まちなさいよ!」と明香が続く。
 いつか明香とも固い握手ができるだろうか。ふとそんなことを思い、東の手の感触が残る右手をかざしてみた。


◇第6章 -弥穂-


「ドロー…」

 カードを引いて、手札をジッと見る弥穂。
 防御力が4以下のユニットをあっという間に食い尽くしてしまうジンクス(コーラサワー機)。となると、このターンはひとまずウロッゾRで攻撃しかできない。

「地球にウロッゾRを出撃させます」
「8ダメージ受けます」

 相手の本国には30点近いダメージが蓄積される。
 10枚をきっただろうか?と、弥穂は相手に本国を訪ねる。11枚。ウロッゾR+ゼハート・ガレット+コイン*2の攻撃がもう1度通ればゲームは終わる。しかし、そう容易くはないだろうことは弥穂にもわかっている。ここまでは彼女の好きなようにゲームを進められたが、ここからの終盤はコントロールデッキである相手の得意とするところだ。

「ターン終了します」

 弥穂は30枚はあるだろう自分の本国を見る。

「私はジ・O&シロッコをプレイし、ジンクス(コーラサワー機)の2枚目するねぇ!」
「あぁっ……」

 AEUイナクト(デモカラー)を緑Gとして、吾妻の場に追加されるACEと2枚目のジンクス(コーラサワー機)。
 ダメージ判定ステップ開始時に、弥穂のユニットに最大8ダメージが与えられ……。
 ちょっと待ってっ、と叫びたい衝動に駆られるが、2枚の手札ではウロッゾRを守りきることは不可能だった。

「攻撃ステップ規定ーっ!両面ジンクスアタックだよーっ!」

 調子の良い口調で頭を振る対戦相手に、弥穂はダメージ判定ステップまで何もできないことを告げる。 
 我妻は両手でウロッゾRを指差す。8ダメージ。

「1枚なら何とかなったのに」

 修正コインを取り除き、ウロッゾRとゼハート・ガレットをジャンクヤードに送りながら、弥穂はそう呟く。
 知らないカードではなかったから、対策手段はあった。

「ダメージ判定ステップ既定の効果前、宇宙の部隊にハイパードッズライフルをプレイ!自分で4ダメージを蓄積したジンクスを1枚破壊します」
「っくぅ、ではダメージ応酬したいです」

 ガードシステムを使った弥穂の本国に4ダメージが与えられ、ジンクス(コーラサワー機)1枚が生還する。
 それで吾妻はターンを終了し、弥穂はカードを1枚引いた。
 引いたカードは、ガンダムAGE-1ノーマル。ガンダムウォーネグザ最初期に活躍した伝説的な紫紺のガンダム。
 しかし、ジ・O&シロッコのようなタイプのテキストを持つACE――俗に言う「2弾ACE」の登場により戦闘配備と共有を封じられることも増え、その活躍には陰りをみせていた。

「配備フェイズ」

 配備エリアには紫のGカードが4枚だけ、相手に2弾ACEとジンクス(コーラサワー機)というこの状況、このカードは彼女の救世主たりえない。
 弥穂は2枚になった手札を閉じて、静かにターンを終了した。

 吾妻の残り本国は10枚。しかし、2弾ACEで戦闘配備を封じられ、ジンクス(コーラサワー機)で仕留める動き。ゲームの主導権は完全に移っていた。
 あのACEの隙を突き、本国に8点のビートも刻む方法は……。と弥穂は必死に考える。

「GNバズーカを黒Gにして、ガンダムスローネツヴァイ(サーシェス機)」

 緑2、黒2、赤2と綺麗に並んだGカードから、ユニットが戦闘配備する。
 場に出た時の起動時効果でキャラクターを破壊できるユニットだが、弥穂の場に対象は無い。20枚もある本国差を挽回するために出してきたのか、と弥穂は納得する。

「宇宙にスローネ、地球にジンクスを出撃させるっ」
「ガードシステム起動、10ダメージで受けます」

 吾妻はターンを終了する。その手札は1枚、リロール状態のGは赤2枚と黒、緑各1枚。
 手札にあるガンダムAGE-1ノーマルと、その隣に並ぶAGEシステムに視線を落とす弥穂。
 本国はもってあと2ターン。次に引いたカードをGにして、無理やり防御6のユニットを作るしかなさそうだ、と覚悟する。

「ドロー……ううん、違うわ」

 弥穂はカードを引くなりかぶりを振って、思わずそう言った。

「配備フェイズ、AGEシステムを紫Gにしてガンダムを、ガンダムAGE-1ノーマルをプレイ!」
「そんなユニットじゃあ勝てないよーっ?ジ・O&シロッコの第1テキストを宣言、プレイを無効にしてロール状態!」

 相手の毒のある物言いに、弥穂は負けない。
 相手Gがロール状態になったのを確認し、残りの1枚の手札を連続でプレイ宣言する。

「フリット・アスノ《01S》を合計国力2でガンダムにセット、共有!」

 フリット・アスノは専用機、AGE-1系ユニットにセットする場合に合計国力を2として扱う事ができる4国力キャラクターであり、共有[AGE-1系]を持つ。
 残り19枚の本国を手にし、「お願いっ」と一気に見る弥穂。分かりやすい赤と白のツートーンカラーのイラストを認めて、彼女はハンガーに引き抜く。
 カードの名前をガンダムAGE-1タイタスという。

「戦闘フェイズ、改装を宣言します!」

 手札の無い弥穂はハンガーのAGE-1タイタスを手に取り、AGE-1ノーマルと置き換える。
 リロール状態となったそのカードの戦闘力は7/1/8……吾妻の本国に決着の一撃を叩き込める値だ。

「ィーィー」

 吾妻は再び歯を食いしばったまま息を吐き、ジ・O&シロッコを手に取った。
 3枚残ったGで地形適性を得て、防御に出撃。互いにコストを持たず、ダメージ判定ステップにAGE-1タイタスがジ・O&シロッコを粉砕し、強襲で吾妻の本国にキズをつける。
 残り8枚。次のターンにはAGE-1タイタスのテキストも使えるようになる。これで勝負だ!と弥穂はターンを終了した。

「ドロー……そちらの本国は?」

 カードを引き、手を止める吾妻に「18枚です」と弥穂は数え答えた。

「攻撃ステップ規定でジンクスのみで攻撃」

 消極的な攻撃で守りに入った、と直感する弥穂。本国に5ダメージを受けながら「勝ち」がチラつく。
 しかし、途端に思い直した。雅人がよく言っていたこと「勝ち(負け)を確信した奴ほど、逆転の可能性を見落とす」。

「ターン終了」
「あたしの……ターンです」

 なるほどAGE-1タイタスは強力だ。交戦中となれば容易にスローネツヴァイ(サーシェス機)の防御力を貫通し本国を削りきる事ができる。
 ということは、AGE-1タイタスを処理できるカードが手札にあるのだろう。スローネツヴァイ(サーシェス機)が配備エリアに残ったのは、追加でユニットを引かれた場合に対処するため。
 弥穂がユニットを引かなければ、手札でAGE-1タイタスを排除しつつ、次のターンにユニット2枚10ダメージで弥穂の本国を0にすればいいだけだ。

 AGE-1タイタスを一撃で処理できる手札。緑赤黒のGが各2枚ならば、GNバズーカで最後の狙撃、大胆不敵……強力なコマンドカードが撃ち放題だ。
 汗ばんだ両手でスカートをぎゅっと掴み、一呼吸。本国の上のカードに白い指を乗せる。

「ドロー!」

 大会会場の喧騒は消え、対戦相手の手札……GNバズーカ、最後の狙撃、大胆不敵、強力なコマンドカードが透けて見えそうなほど目が冴えた。

 強運。
 少女はそう感じずにはいられなかった。

「戦闘フェイズ、ガンダムタイタスを宇宙に出撃させます!」
「追加ユニットは無しりぼはぁあーっ!」

 音を立てて振り下ろされた吾妻の右手にカード。
 来る、と弥穂は1枚きりの手札を握った。

「ティエリア・アーデをスローネにセット!」
「しろっ……っえ?」

 キャラクターカードだ。
 場に出た時に起動する効果は、敵軍部隊1つから本国がダメージを受けないというもの。

「はい、0ー!」

 弥穂は手札――白い狼を握ってどもる。
 GNバズーカ、最後の狙撃、大胆不敵、どれだってかわせた、かわして相手の本国に強襲できた。しかし、相手のそれは、キャラクターカード。

 スローネツヴァイ(サーシェス機)のキャラセット時効果が解決され、フリット・アスノが破壊される。
 AGE-1タイタスはそれきりで帰還ステップを迎え、吾妻のターンに弥穂は敗北した。


◇最終章


 地区予選会場となっているホールから廊下に出てすぐのところ、自販機コーナーの隣に設けられたベンチに雅人は座っていた。
 本大会1回戦の時間中ということもあって廊下に人は多くない。
 制限時間も残りわずかだからガンスリンガーに並ぶほどでもないな、と目の前――トイレの標識をぼんやりと見ていた。

「……あ、雅人」

 ぼんやりとした視界の端、小走りで通り過ぎたシルエットが彼の気付いて戻って来る。
 「1回戦、どうだった」と雅人は眼鏡をかけて、声の主――継紫弥穂に聞いた。

「負けちゃった」

 えへへ、という情けない半笑いで弥穂はそう言った。
 座った雅人はちょうど目線の位置にある彼女のリュックの肩紐を見ながら「そうか」としか言えない。
 小刻みに揺れる彼女に合わせて肩口の茶髪がふわりと薫った。

「なんかデュアルカード強いなーとかそういう感じでさ」

 弥穂は雅人の隣に腰を下ろし、どうにかならないかなという口調でそう続ける。
 ベンチは木製、横幅2メートルくらいのもので、ギシギシと音を立てた。

「あれは2色の指定コストを持ってるぶんカードパワー高めに設定されてるから、同じ国力帯の単色カードとでは――」

 弥穂の言葉に、雅人は眼鏡のブリッジを弄りながらべらべらと喋る。
 それ前も聞いた、と弥穂や健太によく遮られている彼の分析癖であるが、今日は自ら途中でしゃべるのをやめる。そして代わりに「僕も負けたよ」と言った。

「え、そうなんだ」

 弥穂は雅人のほうをチラと見る。
 言われてみれば少し気落ちしているように見えるかな、と眼鏡越しの表情を読み取る。

「あたしテンパっちゃってさ、なーんか最初の方とかもう覚えてないし」

 雅人の天然パーマ気味の黒髪を横目に、腕を組んで伸び。

「僕もだよ。相手にペース握られてからはグダグダやってしまった」
「へぇ、いっつも何でも無さそうな顔してるのに」

 今度は珍しいものを見るような顔で両手をベンチについた弥穂。
 自分でもそう思っていた、と雅人は返す。相手が悪かった、などと言う気はない。自分がまだまだだっただけだ。

「そういう状況で楽しめるようなプレイヤーになりたいな、あたし」

 未熟さを痛感している雅人とは逆に、弥穂はそうありたいという願望を口にする。
 自分の一手、相手の一手、戦況、そういうものを楽しんでこそ、TCGを楽しんでプレイしているといえるのではないか。
 カードを1年、最初は誘われて楽しそうだからと手を付けた、負けが続いてはじめて勝ちたい自分に気付いた、そして勝つための戦いを挑んだ今、弥穂は『それ』に行きついた。

「楽しみたい、勝ちたい、ときて今度は両方か。欲張りだな、継紫は」

 きっとだれもが望んでいるのかもしれない姿。しかしいざ口にされると「欲張りだ」と、そんな返事しかできなかった。
 彼女のTCGの足跡をずっと見てきた雅人にはもっと別の言葉があったかもしれない、しかし、彼はそんな風に口が下手だった。

「皆だってそうじゃないの?」

 欲張りなんかじゃないもん、と弥穂は心外そうに首を振ったあとにっこり笑った。
 一瞬ドキリとした雅人は反論を忘れ、慌てて立ち上がった。

「そもそも、『勝つ』ってことは、相手に少なからずマイナスの感情を与えているわけで、それを考えると自分が楽しむということは――」

 明後日の方向をみてべらべら喋る雅人。
 弥穂も立ち上がって「はいはい」と彼の話を制した。

「むぅ」

 笑顔で、なぜか勝ち誇る彼女に、不思議と悪い気はしない。
 気づくと1回戦の制限時間はとうに過ぎていた。

「おーい、みほちーん」

 本大会会場のほうから明香が手を振ってかけてくる。後ろには健太も続く。
 彼女がいること、おしゃれな格好で来たことに弥穂は目を丸くした。

「来てたんだ」
「うん、みほちんの応援にね」
「調子のいいこと言って、今日壱樹さん来てないよ?」

 明香は「バレたかー」と笑った。
 本国2枚からの逆転勝利を喜々として語る健太に雅人が頷くき、陸戦型ガンダムのデッキは早いから絶対当たりたくない相手だとぼやいた。

MIHOAGE4

「それでは、2回戦の対戦組み合わせを発表します」

 会場の方から、マイクの音にのって進行役の声が届く。
 こういうきりの良いタイミングで3年生が全員集まっているのは珍しいな、と雅人は会場の方を見る。

「行くか」

 雅人が部長らしく「よし」と声を上げた。
 2回戦に向けて足並みが揃ったと思った瞬間、雅人の思いとは裏腹に……。

「おわっ!そういえば、あたしレコーディング行かなきゃ!」

 そわそわと落ち着きのなかった弥穂が開口一番。
 1回戦の後半から我慢してたのを忘れていた、と急に落ち着かない風で走り出した。

「部長、私ちょっと外出てくるね~」

 明香は長い黒髪を弄りながら、外に続くエスカレーターに歩き出す。
 観戦ばかりも飽きてしまうのだろう、ちょっと休憩とばかりに外を目指した。

「よし、次も勝つぞ!」

 そんな女子2人に気付かないのか、ずけずけと会場に戻るのは健太。
 気持ちはすでに次の対戦、2回戦に全力投球だ。

「……」

 残されたのは雅人ひとり。廊下には自販機の音だけが響いて聞こえた。
 なんて勝手なやつらだ……足並み揃うってレベルじゃないぞ、とぶつくさ言いながらも、いつも通りのそんな彼らの姿は嫌いではなかった。
 彼も荷物からデッキケースを取り出すと、熱気立ち込める会場に足を向けた。


「それではみなさん、準備はいいですかー?第2回戦、ガンダムウォーネグザ、レディーゴォーッ!」


MIKIO AGEにつづく

※この物語は架空のものであり、実在の人物・団体・地名等とは一切関係ありません。


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<MIHO AGE あとがき>


「MIHO AGE」は、未完となってしまった『あたしのガンダムウォーネグザ』の主人公・弥穂たちのオチです。

20話以降も彼女たちの時間は流れていた体(いつもの)で、『あたガンN』1話から1年後の春の大会の様子としました。
明香が下心からネグザを初めてたり、後輩が増えたりするのも本来のプロットでやろうとしてた名残。

過程が無いのに結末だけを書いても仕方がないので、「ある日の出来事」のような、前後のありそうな感じにしたかった。
漠然と未来を語り、仲間と楽しく遊んで、着地なんかしなくてもいい。高校生の特権だと思ってます。

さて対戦の方ですが、冒頭書いた通り『あたガンN』同様あっさり目。速度に耐えて逆転できるか、できないか。
本国・手札を細かく計算する方式にしたため、対戦内容自体もシュールになりがちで複数のギミックのぶつかり合いが難しいのです。リアルと取るか、細かすぎと取るか。
対戦相手に関しては今までのシリーズからデッキに合わせて拾ってます(同窓会。

そんなこんな、正直どう書いても途中抜けたのが悔いは残ってしまう世代。
読んでくれた方々のネグザの中で、弥穂たちが生き続けてくれたらいいなと思います。

余談ですが、弥穂の髪の分割を減らして前からもハーフアップに見えるようにしました。

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