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【GWN】ネグザ小説「ランディング」PART1

ネグザグランプリ大会を週末に控えいかがお過ごしでしょうか。
デッキはほとんど決まって微調整を繰り返しているY256です。

今日は予告通りネグザ小説をば。
昨年書いていたシリーズが続いていたらこうしたかった、という内容をベースに、グランプリが近いので大型大会をネタにしています。
ガンダムウォー時代から引っ張ってるキャラもいたり、私自身書くのが最後になりそうだったりで、「着地」という意味の「ランディング」です。

ゲーム自体は3試合同時進行で分かり辛いかもしれませんがご了承ください。色や使っているデッキはある程度ばらかしてます。

今までのシリーズを読んでくれていた方には同窓会的な、また初見でもグランプリまでの暇つぶしになればいいな、と思っています。よろしかったら↓からどうぞ。


LANDING -MIHO AGE-

◇序章

 冬の匂いが僅かに残る東風が吹き、ハーフアップに結んだ茶色い髪が揺れる。
 少女、継紫弥穂(つくし みほ)は目の前にそびえるウッドブラウンの建物――伊達総合会館を見上げ、その建物でこれから行なわれるイベントについて想いを馳せる。

「どうした継紫。おいてくぞ」

 会館の扉を開ける友人、政雄雅人(まさお まさと)の声にはっとして、弥穂は小走りで会館の扉をくぐる。
 背負った桃色のリュックが小刻みに揺れ、すとん、すとんと音を立てた。


【 MIHO AGE (前編) 】


 伊達総合会館は大小のイベントホールを備えた4階建ての建物で、弥穂たちが参加するイベントは2階のホールで開催される予定になっている。
 イベントの名前は『GUNDAMWARNEX-A 地区予選 伊達大会』、全国大会の切符を駆けた地区予選大会だ。
 地区予選は全国7都市をまわるツアー形式であり、本大会の他、物販や抽選会、ガンスリンガー、ブースタードラフト大会なども企画され賑いをみせていた。

 そして、弥穂が所属する府釜高校TCG部は、部をあげてこのイベントに参加することになっていた。

「2年生もう来てるかな」

 2階へと続くエスカレーターに乗ったところで関ヶ原健太(せきがはら けんた)がそう言って上を見た。
 サラサラとこぼれ落ちる栗色の染髪は雅人にいつも注意されていたが、結局3年生になった今でもなおすことはしなかった。
 健太の言葉に「どうかなー、あの子たち結構ルーズだから」と返す弥穂、雅人は「継紫には言われたくないと思うぞ」と眉をひそめた。

 この4月から3年生となった彼らには、2年生2人、1年生3人の後輩がいる。
 雅人と健太、2人だけだったTCG部に弥穂が加わったのを機に、1つ下の後輩が加わり、弥穂の友人が加わり、そして今年は新入生も入ってきた。
 放課後の教室、ふたりで机を突き合わせていた頃は想像もできなかったことだ。雅人はふとそう思う。そして、閉塞的な雰囲気を変えた弥穂に――口にこそ出さないが――感謝していた。

「おはようございます!」

 2階に上がるとすぐにふたりの2年生が近寄ってきた。
 ひとりは伸ばした黒髪をコンコルドでとめた平均身長よりは小さいだろうかという少年、名前を鳥羽佐助(とば さすけ)。
 もう一人はクリムゾンレッドの野球帽を逆に被った少年のような少女、名前を武田早季(たけだ さき)。

「ふたりとも早いね、気合入ってるー」
「ふたり、ですか?もう1人はどこに…」

 弥穂の言葉に早季がわざとらしく辺りを見回す。
 佐助が「おい!」と声を上げ、早季がこれまたわざとらしく「おぉ、小さくて見えなかった」と言った。


 間も無く開場となり、大会参加者は各々卓に座ってデッキリストやアンケートを記入しはじめる。
 弥穂たち5人は入り口付近の卓に陣取ることにした。
 卓には公式のプレイマットと卓番号が振られており、弥穂はいよいよ大会の雰囲気を肌に感じる。

 受付を済ませ、次々に開場に入ってくるプレイヤーたち。さすがに地区予選というだけあってショップ大会などで見たような顔が結構いる。

「BN049R ガンダムヴァサーゴが3枚っと……」
「結局そっちのタイプにしたんだ?」

 デッキのカードを見ながらリストを記入する健太の手元にそのカードを認めて弥穂が口を開く。
 健太は「大きいは正義」と言って笑った。弥穂も「そうだよね」と大きく頷いた。共に強力なユニットを主体としたデッキを使う2人だった。

「あ、京子さーん」

 会話の途中で、弥穂が唐突に手を振る。視線の先には会場に入ってきたばかりの女性。
 肩まで伸ばした黒茶色の髪の女性は、弥穂に気付くと小さく手を振って歩み寄ってくる。

「大会出るんですね!」

 弥穂は嬉しそうにそう言って立ち上がった。
 京子――本田京子(ほんだ きょうこ)は駅前のTCGショップで店員をやっている。
 ネグザのユーザーではないが、友人の調整を手伝ったりしている姿をよく目にした。
 同じTCGショップyの店員曰く、昔、ネグザの前身となったカードゲームがあり、彼女はそのころのプレイヤーらしかった。
 そんなわけで弥穂もよくアドバイスを貰っている。

「なんかプロモをゲットしてほしいらしくてさ」

 と肩をすくめる京子。ネグザをやっている友人から頼まれた、ということらしかった。
 弥穂はそれじゃあ仕方ないですね、頑張りましょう!と呑気なことを言ったが、隣の雅人は京子から違った印象を受けた。
 「仕方なく」という風を装っているが、その目はいきいきとしている。本当はTCGで遊べてることが嬉しい、そんは風だ。なぜやる気が無いように振る舞うのかはわからないが。

「なんだよまさ、京子さんの事じっとみて……お前、まさか!」
「んなわけ……」

 勝手に「勘付いた」と言いたげな顔をする健太に、雅人は天然パーマ気味の頭をぐしゃぐしゃとする。
 視界の端では佐助がまた早季にバカにされて言い合いになっていた。


「それでは第1回戦の組み合わせを発表します」

 開場から何分が経っただろう、進行役の地球連邦軍の軍服を着たスタッフがマイクを入れる。
 その声に弥穂は肩をビクつかせる。

「えっ……もう!?」

 喋るのに夢中でデッキリストを半分しか書いてない彼女は進行役の顔とデッキリストを交互に見た。
 だから事前に書いておいたほうが楽だと……と雅人はため息をつき「2回戦終了時まで書けばいいから、行くぞ」と立ち上がった。

 京子は、高校生5人に「がんばってね」とエールを送って行った。
 揺れる黒茶色の後ろ髪、右手には白いデッキケースがしっかりと握られていた。

「よーし、行きますか!」

 弥穂は立ち上がると、スカートをぱんぱんを払った。
 「誰が一番高い順位になれるか勝負だぜ!」と笑う健太、「はしゃいでプレミするなよ……」と雅人が続く。


 そして、中央のホワイトボードに1回戦の対戦組み合わせが発表された。


◇第1章 -弥穂-


 貼り出された1回戦の対戦表、23番卓に自分の名前を発見した弥穂。対戦相手の名前は「吾妻秀樹(アガツマ ヒデキ)」とあった。
 ショップの大会には何度か出たことがあったが、それとは別次元に広い会場、少女は無意識に緊張で肩を強張らせた。
 たどり着いた卓にはまだ相手はいない。深呼吸をして椅子を引き、デッキケースからカードを取り出してシャッフルを始める。

「継紫さんですか」

 向かい側から声をかけられ、弥穂は顔を上げる。
 チェック柄のシャツを着た角刈りのような髪型をした眼鏡の男性がデッキを手に会釈をしていた。

「はい。えと、吾妻さんですね。よろしくお願いします」

 と弥穂も机の上のカードに前髪が付きそうなくらい頭を下げた。

「いやー全然休みが無くて調整ギリギリですよぉー危うく寝過ごすところでしたー」

 そんなことを言ってシャッフルを開始する吾妻。
 一見かなり年上なのかとも思った弥穂だったが、無邪気そうな笑顔を見てよくわからなくなった。

「それではみなさん準備はいいですかー?」

 進行役がテンション高めにそう言って中央のステージ上から対戦卓を見渡す。
 約100卓200名――この状態ではまだだれも勝者ではなく、また敗者でもない。
 ここから全6回戦をかけ、それを決めるのだ。

「1回戦、ガンダムウォーネグザ、レディーゴーッ!!」

 掛け声と共にプレイヤーたちは一斉に頭を下げ、先攻後攻を決めるじゃんけんのために手を出した。

「先攻もらいます」

 弥穂は開いた手を引込めてそう言うと、カード6枚を表にした。
 マリガンはなし……いや、かなりいい札だ!と彼女は前を見る。相手もマリガンはないようで、ゲームがはじまった。

「配備フェイズ、紫のグラフィックカードを配備」

 ゼハートとフラムが描かれたグラフィックカードをGゾーンと書かれた場所に配置し、弥穂は5枚になった手札を閉じた。

「ターン終了です」
「ドロー。配備フェイズ、クロスボーン・ガンダムX1(スクリュー・ウェッブ)を赤Gにしてターン終了」

 グラフィックがただのGではないように、相手のGもクロスウェポンと言う機能を持っている。
 場に対象ユニットがいないとつ忘れてしまいそうになる、と弥穂はカードを引いた。
 Gエグゼスを2枚目のGにして、このターンから動く。

「ウロッゾRをプレイ、戦闘配備します」
「よかろう」

 弥穂がガンダムウォーネグザをプレイし始めて1年。
 白紫から始めて、青紫、緑紫、赤紫、エトセトラ……紫の混色デッキも使ってみたが、結局彼女は最初に組んでいた単色デッキで戦うことを選んだのだった。

「攻撃ステップ規定の効果でウロッゾRを地球エリアに出撃させます」
「特になにもないので3ダメージもらいます」

 ウロッゾRを帰還させターン終了する。
 クロスボーンデッキならば、少なくとも4ターン目までは戦力となるユニットは来ない?
 雅人の赤デッキのひとつにあったクロスボーンデッキとの対戦を思い出しながら弥穂は相手の手元を見た。

「配備フェイズ、赤い彗星を緑Gとして配備」
「み…」

 赤緑か、と弥穂は思わず脱力して口を開ける。
 G1枚から相手のデッキなど分かるはずもない、緊張からか慣れない「読み」をしてみてしまっている自分に内心苦笑する。
 そして少女は「先に緑Gを見せられていたらウロッゾは攻撃できなかったから、そういう意味ではちょっとラッキー」と思い直した。

「ターン終了」
「あたしのターン!」

 弥穂はすでに初手から3ターン目の動きまで決めていた。
 紫の特色は、展開力と攻撃力だ!とフラム・ナラのカードをGとしてプレイした。

「ウロッゾRにゼハート・ガレットをセット」
「くぅ……よかろう」

 弥穂は気付かないが吾妻の表情が一瞬曇る。
 強襲、速攻(「水中用」部隊時)を備えた6/3/5のユニット。赤Gと緑G1枚ずつではこの攻撃は防ぐことはできない。

「戦闘フェイズ!」

 地球エリアに出撃し相手の本国を6枚削る弥穂のウロッゾR。
 3枚になった手札を構えて、弥穂はターンを終了した。

 赤緑という色の組み合わせは雅人のお兄さん、政雄壱樹(まさお いっき)がよく使っていたからわかる。得意なのはダメージ能力だ。
 壱樹との戦いで弥穂が学んだことは、ダメージ能力というものは防御力という『数字』を相手にしているため、その『数字』を増やす事の出来る能力が多い紫デッキにとっては決して苦手な効果ではない、ということだった。

「ドロー。配備フェイズ、ギャプランを黒Gとしてプレイ」

 また違う色のG?と弥穂は困惑するが、配備フェイズはそれきりだった。
 そして、吾妻はターンを終了することなく、次のフェイズを宣言した。

「戦闘フェイズ」
「……はい」

 自分のユニットもないのにこの言い方……弥穂には身に覚えがあった。
 事が起こるのはおそらく、ダメージ判定ステップだ。

「ダメージ判定ステップ」
「はい、どうぞ!」
「スナイパーライフルで配備エリアのウロッゾに5ダメージを与えます」

 そこに来て、そのデュアルコマンドを見てやっと、今までの対戦が自分の中に蓄積されているということを弥穂は実感した。
 緑+黒+赤……相手のデッキは知らないけど、やれる!と。

「カットインでビームラリアットをプレイ!ウロッゾは落とさせません」

 残りの黒G1枚でウロッゾに2点を与える手段はない。弥穂には確信があった。

「くそぉう、ターン終了!」
「あたしのターン。Gを配備して、AGE-1フラットをプレイ!」

 スナイパーライフルを回避した勢いそのままに、弥穂は滑らかな手つきでカードをプレイする。
 ウロッゾRに+1/+1/+1コインを2個乗せ、戦闘フェイズ。

「ウロッゾを地球エリア、AGE-1フラットを宇宙エリアに出撃させます」
「早ぃ……12ダメージ受ける!」

 吾妻は歯を食いしばったまま息を吐き、本国を手に取った。
 あっという間に本国が20枚以上もダメージを受けたのだ、どんなデッキでも痛手だろう。と弥穂はターンを終了する。

「ドロー……フラスト・スコールを赤Gとしてプレイし、ジンクス(コーラサワー機)をプレイするぅ!」

 吾妻は、ゲーム開始時から想定したプラン通りにそのユニットを戦闘配備した。
 サーベルを振り下ろした4つ目のMS、その攻撃的なイラストと同じくテキストもかなり前衛的なものである。

「ダメージ判定ステップ開始時に自分と相手ユニットに4ダメージを強制してくるユニット……」

 弥穂の記憶の中、配備エリアで撃破されるお気に入りのカード――ガンダムAGE-1スパローの姿が蘇る。
 吾妻はそのユニットに自信があるらしく「YESだねぇ」と口元に笑みを浮かべる。
 心なしか徐々にテンションが上がってきている対戦相手に、戦いになると元気になるとはこういうことか、と弥穂は最近見たガンダムの台詞を思い出した。

「攻撃ステップ、ジンクスを宇宙に出撃させる」
「ダメージ判定ステップまでどうぞ」
「このジンクスとそっちのAGE-1フラットに4ダメージをー与えるぅ!」

 AGE-1フラットはどうすることもできず破壊され、弥穂は本国に初めてのダメージを受ける。
 帰還していくジンクス。防御力4以下のユニットは自動的に抹殺されてしまう強力な効果……スナイパーライフルを先に消費してくれて助かったと弥穂は相手のジャンクヤードを見る。
 ウロッゾRの防御力は7もあるのでジンクス1枚でどうこうはならないが、相手はまだ黒のコストを持つカードを見せていない。それが不気味だ。
 
 しかし、場では負けていない。このまま本国を削りきってやる!と弥穂は意気込んだ。
 勝ちへの、勝負への集中力が高まっている少女に、先ほどの緊張は消えていた。

LANDING1


◇第2章 -雅人-


 1回戦の対戦卓についた雅人は対戦相手に軽く頭を下げる。
 スコアシートには「版十赤音(ハント アカネ)」とある。デニム生地の上着を来たおかっぱの物静かな雰囲気の女性だった。

「それではみなさん準備はいいですかー?」

 デッキケースから赤いスリーブ――シナンジュ(バズーカ)柄の公式製品――を付けた50枚のデッキを取り出す。
 互いのデッキをシャッフルし、プレイマットの「本国」と書かれた位置で永谷園のお茶漬け柄のスリーブがつけられた相手のデッキと突き合う。

「1回戦、ガンダムウォーネグザ、レディーゴーッ!!」

 じゃんけんで勝った雅人が先攻となりゲームが始まる。
 6枚のカードをみて、即刻「マリガンします」と宣言する雅人。相手は「私は大丈夫」と返した。

 自動的にスタートを切らなければいけないマリガン後の6枚を見て、雅人は内心ほっとする。
 十分だ、と配備フェイズにシナンジュ・スタインを1枚目のGとした。

「私のターン」

 版十は7枚になった手札から、巡る因縁を1枚目のGに選んだ。
 リンクコマンドと呼ばれるタイプのカードであり、捨て山やジャンクヤードに特定のカードがあることで強力になる機能を持っている。
 巡る因縁のリンク先は対の猛撃。ユニット破壊カードだ。

「ターン終了」
「ドロー。カプールを赤Gにしてターン終了」

 雅人は淡々とターンを進める。
 使い慣れた自分のデッキだ、手札の内容からGにするカードを迷うことはほとんどない。

「……高機動型ザクII(ジョニー・ライデン機)を緑Gにして、グフ(ランバ・ラル機)をプレイしたい」
「通ります」

 カウンターカードを持つデッキ特有の「許可」を口にする雅人。
 戦闘配備されるグフ(ランバ・ラル機)は最強クラスの速攻ユニットであるが、捨て山のない現状では相手本国の損失も大きい。

「戦闘フェイズ、グフを地球に出撃させます」
「何もできないので本国に5ダメージ受けます」

 「では」と版十は本国の上のカードを3枚――クァバーゼ、GNバズーカ、歴史の立会人を除外した。

「ターン終了」
「ドロー、巧妙な罠を赤Gにして」

 ターン終了。スロースターターだが、それだけ後半戦に自信を持ってもいた。
 版十はカードを引き、ジ・Oを黒Gにした。対の猛撃なら格闘10以下を破壊か…などと雅人は考える。

「戦闘フェイズ」

 配備フェイズにG以外のカードを追加することなく、版十は鋭いまなざしで雅人の手元を見てそう告げた。

「攻撃ステップ規定前、永遠のフォウをプレイしたい」

 手札を全て見てカード1枚を本国の上に移すコマンド。既にユニットのいる現状、それは確定的な除去となる。
 雅人は迷わず手札のカードから1枚を絵選び取る。

「覗かせはしない、比類なき力で無効にする!」

 対の猛撃に当てようと思っていたカウンターカードだが、ここで使う。
 5枚ある手札を見られてはこの後の動きが筒抜けとなる。それは防がねばならない、と雅人は眼鏡の奥でゆっくりと瞬きをした。

「グフを地球に出撃させます」

 お互いに1枚のGを残したまま、ダメージが応酬されてターンが終了する。
 除外されたカードは巡る因縁、トゥトゥガ、デスゲイルズであった。

「ドロー。優位な交渉を赤Gにして、シャンブロ(水中巡航形態)をプレイする」
「了解」

 シャンブロ(水中巡航形態)は水中用を持つ自軍ユニットが場に出たフェイズに、敵軍ユニット1枚を抜き出しターン終了まで無力化する能力を持ったユニットだ。
 水中用ユニットを適時プレイし、敵軍ユニットの動きを封じるのが雅人の中盤戦における第1の作戦であった。

「攻撃ステップ」

 黒1Gでどうにかされるほどヤワなユニットではない、とシャンブロを地球に出撃させる。
 ほどなく版十の本国に4点のダメージが入り、ターンが切り替わる。

「リロール、」
「規定の効果後、コマンドをプレイする」

 Gカードを1枚ずつリロールさせる版十を雅人は制す。
 既定の効果後のフリータイミング、彼は手札からコマンドカード悲痛な過去を引き抜いた。

「合計国力Xは2」

 相手の動きを抑制する強力無比なコマンドカード。状況次第ではターンが消し飛んだようにも錯覚させる能力であった。
 雅人は次が5ターン目、この露払いによって主力まで一気にターンを繋ぐのが第2の作戦である。
 しかし版十はそれをすんなりとは受け入れなかった。

「カットイン」
「!」

 合計国力は3、タイミングはリロールフェイズ。
 雅人が察するより早く、真っ黒いカードが場に突き出された。

「ガンダム[ブリングルスティ]をプレイする」
「クイックユニットか……」

 雅人は気付かないことであったが、版十はそのプレイで「~したい」ではなく「~する」と言った。
 彼女は無駄口を叩く性格ではないが、その語調には「いつまでもそちらが許可する側だと思うな」という強い意志が込められていた。
 そして、コストを持たない雅人は、ガンダム[ブリングルスティ]のデメリットとも言える効果――場に出た時に1コストを払うことで相手にカード1枚を引かせる――を使うこともできない。

「配備フェイズ」
「了解」

 これで10ダメージは確定、少し厳しいな、と相手が4枚目のGカードを配備するのを見守る雅人。Gの色は緑。
 
「ガンダム[ブリングルスティ]にランバ・ラルをセット」

 1国力で2/0/3の戦闘修正と強襲を持つ破格のキャラクターが追加される。
 悲痛な過去はこの場合時間稼ぎの意味でのプレイであり、時間の代わりにカードを1枚失っていることになる。よって時間すら稼げていない現状は雅人側にとって完全な無駄となっていた。
 そして、このゲームにおいて無駄が増えれば、それは確実に敗北へと続いている。

「攻撃ステップ規定、グフとグリンブルスティを出撃させて12ダメージ」
「受けます」

 蓄積ダメージは22点、本国が一気に減る。
 残り18枚にシナンジュがいなければ次の配備フェイズには敗北の絶望を味会うことになるな、と雅人は手札のローゼンズールを見て息をのんだ。

LADING2


◇第3章 -健太-


「ねえちょっと、健太?」

 健太が蒼詩明香(あおし はるか)に呼び止められたのは自分の1回戦の対戦卓に向かっているときのことである。
 明香は弥穂の親友であり、”一応”TCG部所属の3年生であった。

「あれ、大会出ないんじゃなかったのかよ」
「出ないわよ、今日は壱樹さんのお・う・え・ん」

 長い黒髪を弄びながら意味ありげなウインクをする明香に、健太は「壱樹さん今日用事あって出れなくなったってよ」と苦笑する。
 明香は手を止め、健太をまじまじとみて数秒、小さな悲鳴を上げた。

「なによそれっ、じゃあ私は無駄足って訳!?」
「無駄足ってお前なぁ……仮にもTCG部部員が」

 呆れる健太に「お前はやめてよっ」と突っかかる明香。
 彼女がTCG部に入ったのは、弥穂との付き合いで偶然にも雅人の兄・壱樹に一目惚れして、彼に近づく口実としてである。
 そのためカードゲームの腕は一向に上達せず、当時最強と言われた青単Zをもってしても勝ちを掴めなかったほどだった。

「せっかくだから対戦見てきなよ」
「えー」

 やる気のない明香に雅人はさじを投げているが、健太はことあるごとにTCGの楽しさを説いていた。
 そんな彼を鬱陶しく思いながらも、普段男性の前では猫をかぶっている明香も本音でしゃべるようになっていた。いや、正確には男性として意識しなくなったとも言えるが。

「仕方ないなぁ。部長やみほちんはすんなり勝つだろうから、負けそうなあんたの試合でも見ててあげますか」

 やれやれと腕組みする明香。
 「なんだよ、その言い方」と言いながらも健太は対戦卓の椅子を引いた。

 健太の対戦相手は20代中盤くらいの男性で、肩口まで伸ばした黒髪に眼鏡、Tシャツというラフな格好だった。

「東次郎(あずま じろう)だ、よろしく」

 律儀に右手を差し出す対戦相手に、健太も名乗って手を取る。
 
「それではみなさん準備はいいですかー?1回戦、ガンダムウォーネグザ、レディーゴーッ!!」

 進行役の合図とともに1回戦が始まった。じゃんけんで健太が先攻と決まる。
 攻撃力に自信のある健太のデッキ、先攻は鬼に金棒だった。

「配備フェイズ、オルバ・フロストを茶Gにしてターン終了です」
「お、兄弟デッキか、いいね」

 東はわくわくしたような口調でカードを引く。

「配備フェイズ、陸戦型ガンダムを青Gに」
「そっちは陸戦型ガンダムデッキですか」
「あぁ、人海戦術をプレイしてドロー、ターン終了だっ!」

 高速デッキはあまり戦う機会の少ない相手だな、と健太はカードを引く。
 ロールコストの性質上1ターンに展開できるカードは限られており、早い段階で本国に致命傷を与えるほどの攻撃は難しいのだ。

「Gコントローラーを茶Gにして、フリーデンをプレイ」
「規定ドローを捨て山に変更できる効果か」
「ええ」

 序盤からダメージを受けてもドローを捨て山に変更できるため本国消耗を最小限に抑えられる。
 さあ、来い!と言いたげな挑戦的なフリーデンでターンを終了する健太。

「配備フェイズ、ジェスタを青Gにして…いくぞ!」

 そう言って東が1番最初にプレイしたのは紫色のカード。

「ガンダムEz8&シロー!この青Gを2コストに変換!陸戦型ガンダムをプレイする!」

 Gにあるのと同じ、デッキに4枚以上入れることのできる陸戦型ガンダムがプレイされる。
 東のデッキの根幹を成すといって良いEz8&シローと陸戦型ガンダムの組み合わせ。

「陸戦型ガンダムがプレイされて場に出たので、2コストに変換した青Gをリロール、人海戦術で陸戦型ガンダムをリロール」
「コストが……減らないのか」

 ようやく理解した、と言わんばかりの反応を見せる健太の前にさらに陸戦型ガンダム(ミサイルランチャー)とブラッドハウンドが展開される。
 陸戦型ガンダムのテキストは1ターンに1度しか起動しないが、それだけでも通常の倍の速度でユニットを展開する事ができるのだ。

「戦闘フェイズだ、地球に陸ガン、陸ガン(ミサイル)、ホバートラックで出撃だっ!」

 地球エリアに一列に並んだユニット群。
 東がブラッドハウンドを劇中名で呼んだのを聞いて健太はニヤリとする。この会場にいるほとんどのプレイヤーがガンダムウォーネグザをやっている要因のひとつに「ガンダムが好きだから」を上げるだろう。そこから来る妙な一体感をその瞬間に感じたのであった。

「5ダメージ受けます」
「ターン終了。ホバートラックでエンド時に1ドロー」

 捨て山ドローで誤魔化せる攻撃力じゃなさそうだ、と健太はターンを開始する。
 そうは言っても、ドローしたカードを加えた手札6枚、このターンも有効な防御策を講じることはできない。

「配備フェイズにガンダムXディバイダーを茶Gにして、カテゴリーFをプレイ」

 フロスト兄弟専用としてデザインされた特殊なオペレーションで、強襲・共有を持ったカード。
 共有で本国からガンダムアシュタロンをハンガーに移し、ターンを終了する。

「ドロー。人海戦術を青Gにして、陸戦型ガンダム(シロー機)をプレイ」

 陸戦型ガンダム系の全てのユニットをサイズアップする指揮官機が登場し、Gがリロール。
 陸戦型ジムが追加され、人海戦術でさらにリロール。横一列に並べられた5枚のユニットが健太の本国を向いていた。

「戦闘フェイズにいくぞ!」
「はい」
「攻撃ステップ規定で地球エリアに、陸ガン、陸ガン(シロー機)、陸ガン(ミサイル)、陸ジム、ホバートラックで出撃!」

 芝居がかった語調で「一気に仕掛ける!」と言った東は、陸戦型ガンダム(ミサイルランチャー)のテキストを宣言し、フリーデンをロールする。
 高速デッキにとってはチャンプブロックすら勝利への障害となる。東は腕をまくって本国に手をかけた。

「ダメージ判定ステップ、陸ガン(シロー機)のゲイン!……4!」
「なっ、マジっすか」
「4、6、3、2、0で15ダメージだっ!」

 東は5枚という相当数のユニットを、手早く配備エリアに戻してターンを終了した。

「俺のターンです……」

 健太はフリーダンのテキストを宣言して捨て山からカードを引いた。
 残り本国は20枚。次のターンも相手ユニットが増えることを考えると、攻撃を止める事ができなければ致命傷だ。

「15年前の悪夢を茶Gにして、ハンガーのガンダムアシュタロンをプレイ」
「了解っ」
「戦闘フェイズに供給して、ターン終了です」

 アシュタロンかフリーデン、損失は仕方がないな、と健太は覚悟する。
 陸戦型ガンダム(ミサイルランチャー)によって思うように防御することもできないが、耐えるしかない。と視線を手札に落とす。ターンさえ稼げれば、作戦はまだあるのだ。
 しかし、東は待ってくれない。いや、デッキの性質上、待つわけにはいかない。

「引いたばかりのグラフィックを青Gにして、エレドアをプレイ!」
「しまっ…」

 エレドア・マシスは3枚以上の自軍部隊のいるエリアに、ユニット1枚だけの敵軍部隊の出撃を抑制する効果を持つステイキャラ。
 ユニットが2枚しか用意できていない健太に、陸戦型ガンダム(ミサイルランチャー)とこのカードの組み合わせを防御する術はないのだ。

「ACEでこのGを2コスト指定してガンダムEz8を追加、エレドアを宣言」

 東はEz8のプレイでコストのGを起こし、エレドアの効果を宣言した。
 残りは2G、出撃後に陸戦型ガンダム(ミサイルランチャー)のテキストを宣言するには十分なコストだ。

「攻撃ステップ規定で、Ez8、陸ガン、陸ガン(シロー機)、陸ガン(ミサイル)、陸ジム、ホバートラックで出撃!」

 防御ステップに陸戦型ガンダム(ミサイルランチャー)でフリーデンがロールさせられ、ダメージ判定ステップを迎える。

「クロスウェポンでEz8のテキストを陸ガン(シロー機)に飛ばし、2枚ともパンプアップを宣言!」

 ガンダムEz8は本国か捨て山の上のカード3枚を除外することで+2/+2/+2の戦闘修正を得る効果を持ち、これを1コストでクロスウェポンする事ができる。
 これでコストは使いきりであり、ゲインは無い。
 健太は怖くなって相手戦力を計算するのをやめた。

「7、2、4、3、2、0で18ダメージだーっ!」


後編につづく

※この物語は架空のものであり、実在の人物・団体・地名等とは一切関係ありません。

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Appendix

プロフィール

Author:Y256
【ネグザ】
14都市称号争奪戦で『蒼聖の撃墜王』になりました

【ゾイド】
HMM・MSS休止…悲しい

カウンタ

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